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バニシングツール株式会社は工具技術に精通し、お客様第一の理念のもと先端分野にバニシングドリル・リーマをお届けしています。

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技術情報

Q&A及び問題点の対処法など

Q1. バニシングドリル・バニシングリーマの超硬材種は何ですか。
K10相当材種を使用しております。
Q2. どんな加工物でも加工できますか。

超硬合金製ですから自ら限界はありませんが、実績の多いものから列記すると次に示す通りです。

  1. アルミ合金全般(アルミダイキャスト、アルミ鋳物)
  2. 普通鋳鉄(FC10~25)
  3. 亜鉛合金
  4. ダクタイル鋳鉄(FCD40~65)
  5. 高級鋳鉄(FC30~35)
  6. 快削鋼・超快削鋼
Q3. 鋼は加工できないのですか。

超硬ドリルによる鋼の穴加工はまだまだ不安定な要素が多く、周辺の条件が揃わないと無理のようです。従って、ひとりバニシングドリルだけが加工できないということはありません。現段階ではバニシングドリルに限らず、超硬ドリル全般が鋼加工に不向きな状態にあるとお考えください。

ただ、周辺の条件、例えば

  1. 切削剤をドリル内部クーラント方式にて、切屑および切削熱を強制的に排除する。
  2. ツールおよび機械のツーリング剛性を高める。
などが揃えば、鋼のドリル加工も超硬化可能となります。
Q4. 青銅や黄銅などの色ものは加工できますか。

通常の青銅や黄銅は問題ありませんが、リン青銅や高力黄銅などの坑張力の高い銅合金については、加工中の切削熱により加工穴径が縮小気味となるため、ドリルが締付けられ、加工物との摩擦トルク(バニッシングトルク)が増大して折損し易くなります。 アルミ材でも加工中、穴径が縮小することもありますが、材料の強度が低いため、ドリルが締付けられても折損にまで至るということはありません。

Q5. 切削剤はかけなければいけないですか。

1)アルミ、亜鉛、ダグタイル鋳鉄、高級鋳鉄などは切削剤を充分かけて下さい。
アルミや亜鉛は切削剤をかけなければ加工面がムシレますので潤滑のため、また、ダグタイル鋳鉄のように鋼に近い強さを持った加工物では切削熱が高くなりますので冷却のため、それぞれ切削剤は必要となります。(これらの加工物に対してはツイストドリルにおいても、通常切削剤をかけます。)
切削剤は水溶性、不水溶性(油性)どちらでも構いませんが、加工する穴の精度により次に示す切削剤を選定してください。

  1. 一般的なドリル加工の場合 → 水溶性
  2. 仕上面をきれいにしたい場合 → 不水溶性(油性)

尚、切削剤はその種類によって「期待する効果」が違いますので、選定を間違えないように注意して下さい。

  水溶性 不水溶性
冷却効果
潤滑効果

(注)水溶性で潤滑効果を高めるためには、希釈率を低くします。通常の希釈率30~50倍 → 8倍~15倍

 

2)普通鋳鉄ならドライ(切削剤なし)でも加工できます。
ただし、機械の主軸は横軸だけとします。立軸の場合は切削剤をかけて下さい。 → Q8.を参照

 

問題点の対処方法

 

【1】不水溶性切削油について

原料は鉱物油を主体に添加物を加え市販されている。性質と効力では先ず潤滑性が優れている。切削摩擦熱に対し蒸発しない。
又、浸透性が強くバニシングツール使用の必要条件を満たしている、好適な切削油であります。設定された刃具寸法をバラツキなくワークに移すと共に、仕上がり面粗度は抜群に良く、刃具寿命も極めて長く経済的であります。
ワークに付着した油を除去するに洗浄を要するので、後処理費用が若干高くなるも本来の目的である工程の短縮と寸法精度の安定を重視するならば、副産的利益も含めそのメリットは莫大となります。
加工精度の上限としては、精度はH6から、面粗度は3Sから、切削条件として回転当りの切り込み量は、0.05~0.1・被削剤アルミ・FC共に同じですが周速はアルミで30~80m・FCで20~50mを目安として、周速調整して下さい。

 

【2】水溶性切削油について

原料は鉱物油、化学製品を主体として市販されている。特徴としては刃具の冷却作用に優れた効果と原液を水で希釈できるので、価格的に安いが、バニシングツール使用上の必要条件である潤滑性、耐熱、浸透力に欠けるので加工物の精度を満足させるには、やや不十分であります。対策として原液の希釈倍率を10倍ぐらいにすれば、潤滑効果が高くなり、十分に要求精度を満たすことが出きます。注油方法は大量に強く適所から正しく行って下さい。
加工精度の上限としてはØ精度H7から面粗度6Sからで切削条件は、不水溶性切削油使用の条件と同じであります。が周速が早すぎると切削油がはじかれ現象をおこし、乾式状態になり要求精度を満たすことが出来ません。

 

【3】下穴のあるワークにドリルを使用

ドリル先端切刃に角度が付いているので、下穴に倣って刃具にコジレ現象が生じ折損の原因となります。貫通下穴はもとより、メクラ下穴・取代の大小に関係なくリーマを使用すること。
止り穴を一発加工で仕上げる場合、先端切刃の中心まで刃付を必要としますので、発注時に指示をして下さい。

 

【4】貫通穴の出口がボロボロに欠落する

ドリル・リーマ共に切刃摩耗と切削送り速度が早すぎるためにおこる現象ですので刃研をして適正な切削送りで使用する、刃研方法は弊社カタログ再研方法を参照下さい。

 

【5】刃具の外径仕上がり程度がワークに移るか

移りません。いかに刃具外径を鏡面仕上げをしても、ワークの仕上がり面粗度には関係がありません。刃具の外径面粗度の荒さを問題とする向きも有りますが、この面粗度は意識的に設定されたもので、荒い研磨目はきわめて重要な役割を果たして居ります。
加工ワークのほとんどが偏肉素型材であり、刃具外径に対し不平等圧力が加わる関係から刃具外径を鏡面仕上げをすると、真円度を確保することができません。
不平等圧力を平等圧力にする役目を果たすのは刃具外径の荒い研磨目であります。
荒すぎず、こまかすぎず加工ワークの寸法確保を長時間維持するよう設定されております。

Q6. どのような切削条件で使用すればよいですか。

一般的な目安としては、

  • 切削速度:ハイスドリルの2~3倍
  • 送り量:ハイスドリルの1/2
被削材 切削速度 mm/min 送り量 mm/rev
アルミ・亜鉛 50~100 0.05~0.1
鋳鉄 25~50  
快削鋼 20~30 0.05~0.1

 

Q7. バニシングドリルは変わった形状をしていますが、ツイストドリルとの違いを説明して下さい。

まず、それぞれのドリルの形状図を見て下さい。

 

1)切削排出溝(フルート)が真直ぐ

ツイストドリルは文字通り、フルートがツイスト(ねじれ)しており、切屑の排出性と切れ味を決定しております。
これに対し、バニシングドリルはフルートがストレート状のため、すくい角はゼロになりますが、チゼルが鋭利にできてるため、スラスト負荷はツイストドリルとあまり違いません。

 

2)ガイドがついている

ツイストドリルは、切刃2枚にそれぞれ加工径を決定するマージンが設けられており、この部分だけが加工された穴内面と接触しております。
これに対し、バニシングドリルには切刃マージン以外に、もう2ヶ所マージンの巾とほぼ同等の巾のガイドが設けられておりますので、加工径はこの4ヶ所にて決定されることになります。
このため、穴内面との接触度合はツイストドリルの約2倍となり、加工中の摩擦トルク(バニッシングトルク)もほぼ2倍となります。

Q8. ねじれがついていないので、切屑が出にくいのではないか。

確かに刃先から柄の方向に向けて、切屑を送り出す役目としてのねじれを持ったツイストドリルの方が、ストレートフルートのバニシングドリルより切屑の排出性は良いでしょう。
しかし、通常の穴明深さ(ドリルの径の2~3倍程度)では、それほど問題はありません。また、深穴の場合ではいずれにしても切削剤は刃先附近にまで到達できませんから、ドライ加工に近い切削状態になりますので、刃先部は溶着して切屑が出にくくなります。特別使用でオイルホール付を深穴加工に最適です。ただ、主軸が「立」か「横」かでかなり違ってきますので、ご注意下さい。



横軸では上図の通り、切屑は自然に排出し、落下するため問題はないのですが、立軸の場合では排出する切屑がドリルの回りに堆積するため、切削熱が刃先に集中し、切屑の溶着となって、チゼルのチッピングや折損などの事故が起こり易くなります。
この場合でも、切削剤がかかっておれば、切屑やドリルが冷却、潤滑されるため、溶着しにくくなり、正常な加工が可能となります。

※逆にねじれがあるために発生する弊害として、切削剤の刃先へのかかり具合があります。バニシングドリルはフルートがストレートですから、切削剤はフルートに沿って真直ぐ刃先方向に侵入できますが、ツイストドリルは刃屑を外にだすためフルートが右にねじれており、故に切削剤は刃先方向に侵入しにくくなります。また、フルート一杯に排出しますので、切削剤の入りを悪くさせているが、バニシングドリルの切屑は小さくせん断されるので、切削剤は入り易い。
尚、切削剤は横軸より立軸の方が圧倒的にかかり易いため、バニシングドリルを立軸に使用した場合でも、切削剤が入り易いという特長のゆえに刃先は冷却および潤滑され、多少切屑の排出が悪くともあまり問題は起らないのです。

Q9. ねじれていないので、切れ味が悪いように思いますが。

一般的に超硬工具は切れ味の悪いものですが、この切れ味をよくしようとしてすくい角を大きくすると、削り易いアルミ材なら問題ありませんが、鋳鉄や鋼などでは刃先のチッピングや欠けが起こり易く、安心して使用できません。ドリルの場合も全く同じだと考えます。
超硬ドリルにハイスドリルと同じような大きなねじれ角(すくい角)をつければ、当然欠け易くなり寿命も安定しません。バニシングドリルは、超硬合金の特性を最大限に発揮できる刃先仕様になっており、これは切れ味を問う以前の問題なのです。(例えばドリル以外の超硬工具の刃先仕様を思い浮かべて下さい)
ただ、切削動力はツイストドリルに比べ、約5~10%増大します。

Q10. ガイド部の効果とはどのようなものですか。

バニシングドリルの独特な形状を形成する最大のポイントが、このガイドです。このガイドによって、加工精度を安定して保証することになりますので、少し詳しく説明したいと思います。
バニシングドリルも、ツイストドリルも、ともに切刃2枚を持つ穴明工具ですが、加工中(切刃に切削負荷を受けたとき)における刃先先端の挙動が加工精度を設定します。
この状況を図により説明します。
ドリルは2つの切刃に切削負荷Pを受けるとねじられ、かつ負荷Pが不釣合であれば、曲げられようとします。バニシングドリルは切削負荷Pによりねじり、および曲げを4ヶ所のガイド部でサポートしますので、加工が進むにつれ、マージンとガイドとの4点支持による「セルフガイド機能」が効果を発揮し、曲りの少ない穴明ができます。
これに対し、ツイストドリルにはガイドがないため、切削負荷Pにより、大きくねじられ、かつE-E方向に曲り易くなります。
曲りの傾向は穴深さが深いほど顕著となります。そこで、一般的にはセルフガイド機能を高めるため、強ねじれドリルを使ったり、あるいはドリルガイド(ブシュ)を設けてドリルが曲がらないよう、サポートしてやることが多いのです。

 

ツイストドリルの穴曲り対策

 

以下にバニシングドリルのセルフガイド機能が充分に発揮される加工例をいくつか紹介します。

 

【1】貫通側が傾斜面
ツイストドリルでは上方に曲げられ、出口側が楕円となる。
(ブシュの有無は無関係)
バニシングドリルでは、セルフガイドされるため曲りにくい。


【2】横穴と干渉する
ツイストドリルでは、横穴に抜け、再び加工するときとで、複雑に曲げられる。
(ブシュの有無は無関係)
バニシングドリルでは、この部分でセルフガイドされるため曲りが少ない。


【3】壁を何枚も貫通する深穴
バニシングドリルでは、明けた穴が全てガイドとなるため、このような加工においても、曲りの少ない穴明けができる。


【4】ドリル喰付部が傾斜面
【4】【5】ともブシュガイドを設けた方が好ましいが、バニシングドリルではガイド部さえ、加工物に入ってしまえば、セルフガイドするため曲りをある程度押さえることができる。


【5】下穴(鋳抜穴)
しかし、ツイストドリルでは、最初の喰付がずれると加工が進行し、ドリルが加工物に進入しても、曲りを規制できず、そのまま曲った穴明けをしてしまう。

(注)【5】の場合とか下孔である場合はバニシングドリルでは好ましくなくバニシングリーマの方が精度面、粗度直角度などの点では最適であります。


バニシングドリルは、加工穴内面との接触面がツイストドリルの、ほぼ2倍ありますので、切削剤によりマージンおよびガイドを潤滑してやればバニッシング効果がでて、極めて美麗な仕上面が得られます。ただ、切削剤が水溶性などは潤滑効果の低いものですと、多量に供給しても仕上面は良くならず、逆にムシレの多い不安定な仕上りになることもあります。
このような場合には、潤滑効果の高い不水溶性(油性)が望ましいものですが、水溶性以外の切削剤が使用できなければ、希釈倍率を15倍以下にし、潤滑効果を少しでも高めて下さい。
従って、切削剤は加工部品に正確かつ、多量に供給するように心掛けて下さい。

 

下表は加工状態による切削剤のかかり具合の善し悪しを判定する目安となるものですが、かかりが悪い場合は、良くなるよう改善する必要があります。

 

使用状態 ツーリングの状態 加工前の状態
主軸 ブシュ 治具類 切削速度 穴深さ 下穴  
切削剤(油)の
かかり具合
 
非干渉 トオシ
干渉 トマリ

注1)加工穴深さは、切削剤のかかり具合より8×d(ドリル径)mmを目安とする。
注2)下穴の芯ズレが1.5mm以上にもなる場合は、若干加工精度も悪くなる。
注3)止まり穴の場合はオイルホール付バニシングツールにすると良い。